回答者

藤原　正彦氏　　　　　数学者

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《小倉百人一首へ》

夫がエッチな雑誌見るのは許せない

見つけると眠れないほどショック

　３０代、結婚１０年目の主婦です。同い年の夫、子どもととても幸せに暮らしています。ただ一つ、昔からの悩みは、夫や父、兄など、自分にとって大切な男性がエッチな画像や本を見るのを許せないということです。不潔で我慢できないのです。

　夫はわたしのことも、子どものことも、とても大切にしてくれます．仕事もまじめで、浮気などするような人ではありません。でも、やはり男なので、きわどい雑誌やビデオ画像を見ます。やきもちかも知れませんが、夫のカバンにそんな雑誌があると、眠れないほどショックです。

(解答を読む前に、自分であったらなんと解答するか、先に考えてください。当然、男性と女性とは違うと思います．)

解答　　　エッチな画像や本に興味を持つ夫が許せない、とのことですが、少々狭量のような気がいたします。ご主人はごく普通の善良な市民のように思います。地球上の思春期以降のほとんどの男性は、エッチな絵が好きか、大好きかのどちらかなのです。独りでこっそりと見ることくらい許してあげるべきだと思います。それすら不潔で我慢ならないというなら、人類の約半分は不潔で我慢ならない人々ということになります。

　いやがるあなたの留守をねらってこそこそ見るなど、いじらしいほどやさしいご主人と私には思えます．無論、家計を圧迫するほどそういったものに資金をつぎこんでいるとしたら問題です。ただ、性に対するあまりに潔癖で厳格な態度が、ご主人を逆の方向に追い込む可能性もあります。

　浮気につながるものでもありません。めくじらたてるどころか、男とはかくも哀れな動物なのかと、心から同情しなければいけないのです。

以下、読まれなくても結構です。例によって私の感想です。

この藤原氏は数学者とかいてありますが、数学以外に何を勉強されたら、このような名回答が書けるのかといつも楽しみにしている記事です。｢少々狭量のような気がします｣　上手く言われました。｢地球上の・・｣は、後に来る｢人類の約半分｣が引き受けまして、スケールが大きいです。日本人だから、エッチな画像が好きなのではないのですよ。（牡だからですよ）という代わりに、スマートですよね。｢思春期以降のほとんどの・・・｣　この文章も上手いですね。私なら、死ぬまでとか、老人何歳になってもと書くところです。｢絵が好きか、大好きかどちらか｣など、この表現は出てきません。私なら、｢全員好きですよ｣となるでしょうか？　｢独りでこっそり｣も然りです。｢ひとりで｣も｢一人で｣も駄目でしょう。｢独りで淋しく読んでいる男｣が浮かんでくるでしょう。｢いじらしいほどやさしいご主人｣と私も思います。家計の心配もしてアドバイスをしておられます。

｢性に対するあまりにも潔癖で厳格な態度が、ご主人を逆の方向へ追い込む・・・｣　この部分は筆者、藤原氏の可能性かもしれません。このように、おどして、もう許してあげなさいと云っておられます。そして、次の｢浮気に・・・｣を書いて心配いりませんよと駄目を押されています。

この相談者は、｢仕事もまじめで、浮気などするような人ではありません。でも、｣と云っておられます。心配しているから、自分で書いて、自分でそんなことはありませんと否定されています。藤原氏はそこの部分も見逃さないで最後に、ホローしておられます。

私が最も、気に入った部分はそこではありません。

｢男とはかくも哀れな動物なのかと、心から同情しなければいけないのです｣

渡辺淳一という作家が、《男とは》という本を出されました。売れなかったのではないかと思います。男は渡辺氏に教えて戴かなくても自分で知っていますから、誰も買わなかったと思います。女性は読まれたら、なんと勝手なことを書いていると思われ、良い評判にならなかったと思います。私は少し、変わっているのか、買いました。あれは力作ですね。男は弱みは愛した人だけにしか見せないのではないでしょうか？　弱みをさらけ出して夫婦生活をしていたのに、離婚となると世の女性はそれをぶちまけて、騒ぎ立てるものですから、殆どの男性は女性の要求を飲んでいるように見えます。（もっとも、私が知っているのは、テレビに出てくる有名人の話だけですが）男の弱みも結構述べられて、７割方正しいと思いました。性の部分は本能の分野です。藤原氏のように上手く表現できませんが、コントロールできない部分です。日ごろ、職業柄、聖人君主であることを要求される人は大変です。この部分を渡辺氏は飛ばされました。

しかし、藤原先生は｢目くじらをたてるどころか、男とはかくも哀れな動物なのかと、心から同情しなければいけないのです｣

この女性は別に､異常ではありません。それだけご主人を愛しておられるのです。理屈では判っているのに､許せないのです。ノックさんの事件の女性も許せなかったのだと思います。それでいいと思います。周りのものが皆､許せないと拳を上げました。もう一度､｢愛｣とはと自分に聞いてみるべきです。今からでも､遅くありません。