横山ノック・セクハラ訴訟事件が、検察側が控訴しないことを決定して、執行猶予付き有罪判決で、永久に確定した。

　私は、このノック・セクハラ訴訟事件に、溜息をつく。つまり、この事件というのは、日本的な“人身御供・人柱・イケニエ”だと思う。

　数年前に、大阪府の堺市で、病原性大腸菌Ｏ‐１５７の大集団感染事件が起きたときに、なかなか原因食材が特定できなくて、とうとう、カイワレ大根が犯人としてデッチアゲられた。病原性大腸菌Ｏ‐１５７は、大腸菌というように、牛などの大腸を持つ家畜動物の大腸に住んでいるわけだから、原因食材は家畜動物の肉を使ったソーセージなどにあるはずなのに、カイワレ大根のような植物に病原性大腸菌があるわけがないわけだから、カイワレ大根がＯ‐１５７の原因にされたのは、完全なデッチアゲ、イケニエだった。

なのに、原因食材がなかなか特定されずに、あらゆる食材に疑いがかけられて、皆がイライラしていた時に、カイワレ大根が犯人としてデッチアゲられると、皆がわっとそれに飛びついた。カイワレ大根がＯ‐１５７の犯人でないことなど、皆、うすうす分かっている。しかし、カイワレ大根が犠牲になってくれることによって、他の全部の食材は安全だということになる。カイワレの犠牲で、他の食料品店や食事屋たちは助かる。で、実際に、そのようになった。

　横山ノック・セクハラ訴訟事件も、まさに、それと同じだと思う。９９年４月に、日本で「セクハラ禁止法」が発行した。つまり、日本の女性たちは、長年日本女性たちは横暴な日本男性たちに虐げられてきたから、セクハラ禁止法の発効を期に、誰か日本男性をセクハラで血祭りにしたい、ギロチンにしたい、という潜在願望。

　そういう潜在願望の時に、一人の女子大生が、横山ノックという有名男性で、しかも庶民派だから無防備で狙いやすいから、ノックを狙って、ノックをセクハラの罠にかけた。そして、その女子大生は、声を大にしてノックをセクハラ男と宣伝した時に、つまり、まず日本の女性たちがわっとそれに乗った。そうだ、そうだ、と。その女子大生に、十数人もの女性弁護士たちが付いた。

  女性たちが皆で、ノックはセクハラ男に決まってると、やれば、それはセクハラ禁止法発行後のジャスト・タイミングだから、大合唱になる。

　そうなると、日本の男性たちも、ノック一人が血祭りにされて、公開処刑のギロチンにされることによって、他の日本男性たちが助かるのならと、さっと女性たちと一緒になって、ノック一人を、孤立無援にした。

　日本の女性たちも、セクハラ禁止法で血祭りに上げる日本男性を捜していたし、それが横山ノックだとなると、日本の男性たちはさっと女性たちと一緒になって、ノック一人に全ての罪をかぶってもらって、それによってノック以外の男性たちは助かろうとした。

　まったく、日本的な事件だったよね。こんな事件、本当は許しちゃいけないんだよね、本当の文明社会なら。